フィレンツェのおはなし
この写真はイタリア・フィレンツェの工房に伺った時、記念に撮ったものです。
私たちは、家具作りを志した時に、イギリスやヨーロッパの暮らしの中に有る家具を見に行きました。
イギリス・オランダ・ベルギー・ドイツ・スイス・イタリア・フランスを巡り、出来るだけ一般的な家庭に伺って大切に使い続けている家具や、そこの人々に触れ、文化の違いを感じる旅を致しました。その旅の終盤イタリア・フィレンツェで、立体造形・家具製作の工房を訪ねる事が出来、製作や修復の姿や立体製作の考え方など解説頂き、日本での家具作りとの違いを大きく感じ、良い経験になったと思います。
日本では古くから、彫刻は彫刻師の世界で、仏像や欄間など専門にされて、家具製作は指物師にと分けられてましたが、こちらの工房ではその両方が一人の職人によってまかされるので、とても発送豊かな物作りが出来ているかと思いました。
固定観念にとらわれず、立体感を持った物作りの世界に、とても興味を引かれたのが忘れられません。
それから数年後、私の立体製作への憧れは、木馬製作の形で実現しました。
イギリスに代表される木馬は、日本で言う所の五月人形に近い物があって、子供の成長を喜び、将来乗馬に繋がる遊具として各家に置かれる物のようでした。その木馬は、色々なタイプがありとてもリアルな物や乗馬用の馬具が付いたり、本物の馬のタテガミを埋め込む物も有ったり。
私も、自分自身の中で感じる木馬を作ってみたくなり挑戦しました。現実とは違うかもしれませんが、例えば空想の中で空をかける馬のように・・など。
色々な木馬の形が有っても良いかと、タイプを変えて数年ごとに作ってみました。
ただ、どうしても手間のかかる大きな木馬は、一般的な家庭用には向かず、需要の方は少ない物でした。ですが、木馬を作る事でのチャレンジ、考え方は、その後の物作りに大きく役立ち、今の自分の世界を作る大きな要因になってるかと思います。
今、私の形の基本になっている立体感、既存の縦横四角にとどまらず、やわらかな曲線に包まれた形。三方向から木を組む事や、自由な位置に曲線に沿った脚を配置する、そう言った事でこれまで感じられなかった立体感を見て頂く事が出来るかと思います。
30年の時を経たこの写真に、私の原点の想いを感じ、さらにこれからに目を向けたいと改めて思います。